《 2004年の収穫日記 》
※「ブルゴーニュ生活」より、主にBize 千砂さんの日記を抜粋させていただきました。

2004年7月18日 日記 Bize 千砂さん(以下敬称略)
日曜日だというのに、朝早く、エディーがうちに飛び込んできました。
一体何ごと?といぶかしがっている私。
するとパトリックと、遊びに来ていたジョン・マリー(ラブノー)と3人で長靴を履いて作業車に飛び乗り、行ってしまいました。
一時間ほどすると、
「どうしようもない。明日になったら考えるか。」
と、開き直った表情のパトリック。その横でジョン・マリーが私に説明をしてくれました。
サヴィニーの畑が広範囲にわたって、昨日の雹で傷ついていたのだそうです。
「もうヴェレゾンが始まったのか?と思ってしまうほど、実が変色していたよ。」
とジョン・マリー。
大したことないと思っていた昨日の夕立。実はかなりの降雨量で、いろんなところで土砂が流れ出し、その上、畑には雹。しかも局地的というには広すぎる範囲での被害。
「でもまだ実が固いうちでよかった。たけど油断禁物。2002年のピュリニーのように、また被害に遭うかもしれないし。とりあえず、月曜はスルファタージュをせねば。でもトラクターでは無理かもしれないなあ(畑がぐちゃぐちゃだから)。となるとヘリコプターか?」
と、パトリック。
あと収穫まで2ヶ月。まだまだ先は長いです。



2004年7月21日 日記 Bize 千砂
今日もです。
雹が降った17日以降、夕刻になると黒い雲が現れ、雷と共に雨が降るのです。日中は蒸し暑く、傷ついたブドウが腐る条件が調いすぎるほど調っています。
昼に、ドミニック・ラフォンが彼女と一緒にテイスティングに来て、ランチを食べながら天候の話になりました。マコン地区では、17日に降った雹が半端でなく、一部では木が丸裸になってしまったそうです。
「これからリリースする2003年の値段を大幅アップするしかないな。」
と半分冗談、でもかなり本気にパトリックとドミニックが話し合っていました。
さっき、雷を聞きながら、
「今年はもうおしまいの気がするよ。きっと収穫までこんな天気なんじゃないかな。」
と元気のないパトリック。
「大丈夫よ。来週からずーと天気になるかもしれないし。」
と、私が適当なことを言ったところで、どうしようもない。
「もう寝る」
と、上にいってしまいました。
全力を注いでがんばったところで、最終的にはお天道様次第。
でも、あきらめちゃだめ。どうしようもないといわれた2000年のような年でも、愛情を込めて育てれば、美味しい個性あるワインに仕上がったではありませんか。
ただいま、日付が替わりました。外ではまだ雷様がうなっています。



2004年7月25日 日記 Bize 千砂
我が家にはテレビがないため、(正式にはあるけれど、リビングにないから見ない)マコンの映像がニュースで流れても見ることがなかったのです。管理人さんの写真の報告を見てびっくり。あそこまでひどかったのね。見ていて涙が出てきました。
我が家の被害は20パーセント程度。昨日からバカンスに入ったドメーヌ・ビーズですが、畑組のエディーとに二コラは残り、雨が降りそうな気配になったらすぐに農薬を散布できるように待機しています。とにかく、傷ついたブドウから腐敗が進行することを今の段階ではとどめなければなりません。腐敗が発生しなければ、収穫の段階で、傷ついた実だけを切り取ればいいので、収穫減を抑えることができます。
幸い、昨日から天候が好くなっていきました。このまま8月を迎え、9月になってくれればいいのですが。
我々家族は明日よりバカンスに出かけます。今年はブルターニュ地方。サン・マロ近郊の海岸で潮干狩り、漁港で生がき、と、海を満喫してきます。
サヴィニーにもどるのは8月10日。
アビアント。



2004年8月23日 日記 Bize 千砂
「去年みたいに、わけの分からないうちに収穫が始まって、炎天下の中畑に出るなんてもうこりごり」
と、いっていたバチがあったったのでしょうか。
もしそうであるのならば、神様、お天道様、ごめんなさい。
夕刻、まとまった雨と共に雹にやられました。
かなりジュヴレーからシャンボールにかけて被害が出たようです。
「ほら、言っただろ。今年は収穫までこんな天気が続くって…」
と、パトリック。その後、黙りこくってしまいました。
一体、頭の中で何を考えているのでしょうか。



2004年8月25日 日記 Bize 千砂
今年は7月の段階で雷雨の観測がコート・ドール県で9回を記録し、1955年の11回に次ぐ記録。8月は既に1997年に記録した11回を更新し13回。そのうち6回は雹を伴う雷雨。
ここまでくると、パトリックも腹をくくったようです。
「いいか、今年は30年に一度の悪夢の年だ。よく見とけ。」
と、わたしに、まるで自分に言い聞かせているように、宣告しました。
「収穫が最悪のコンディションで行われるのはわかっている。俺は今、その後のことを考えているんだ。」
と、目に少し鋭さが戻ってきたように思えます。
そう、こういう時こそ、力の見せ所。パトリックがんばれ。



2004年9月1日 日記 Bize 千砂
一昨日が、満月でした。
月の満ち欠けが替わると大気が変わる、といいます。
そのおかげでしょうか、確かに風向きが変わりました。
それまで黒い雨雲をもたらしていた南風が、北風に取って代わり、今日なんかは快晴。じめっとした陽気が、いっきにからりとしたすがすがしい天気になり、気持ちのいいこと。
今後1週間はこんな素敵な陽気がつづくそうです。



2004年9月8日 日記 Bize 千砂
ここ1週間、嘘みたいないい天気が続いています。このままこんな天気であってくれれば、「結果オーライ」ってなことになりそうなんだけど。
パトリックは難しい顔をして、迫り来る収穫のことで頭がいっぱいな様子。神経質で、心配性の彼。これは今年に限ったことではなく、毎年のこと。だから私は特に心配することなく、「大丈夫よ。」と、本心から励ましています。
白担当のギヨームは、「こういう難しい年だからこそ、楽しみだなあー。」と、頼もしい限りです。こういう余裕が大切ですよね。
来週にはパトリックの精神的な支えとなる、古くからの友人、アランさんも到着。徐々にテンションが上がっていきます。
明日は、収穫時のランチを毎年作ってくれているモニックおばさんとの打ち合わせがあります。
収穫隊も学生やら、ベテランやら、40人は集まりました。
選果台や圧搾機もポジションに配置され、醸造所は綺麗に整頓されました。
少しずつ、準備が進んでいます。



2004年9月15日 日記 Bize 千砂
決まりました。
今年の収穫開始日は9月25日土曜日です。
まだ、収穫解禁日とでも呼ぶのでしょうか、INAOからの正式発表はありませんが、来週には多くのドメーヌが収穫を開始します。
今のところ知る限りでは、来週月曜日、20日スタートというのがいち番早いドメーヌ。確かに、開花から100日計算では20日というのが当初の予定ではありました。手伝いに来てくれる人々の都合もあるし、今さら変更できないというところでしょうか。
1週間違うと、ブドウの糖度も一度弱アップします。先週頭に行った糖度観測では、10度そこそこ。あと、もうもう少しがんばって欲しいものです。
天気は、今週危なっかしそうでも、雨に降られることなく、乾燥した、ブドウにとっては好都合な陽気です。
このまま、雨が降らずにいってくれればいいのですが。



2004年9月23日 日記 Bize 千砂
いよいよ、あさって、収穫開始です。
月曜日あたりから、あちらこちらで、収穫隊の姿を畑でお見受けします。
9月の天候が比較的安定していたからでしょうか、その出来に満足なブドウ生産者のエコーが伝わってきます。まずは、良かった、良かった。あとは、その天候が来週までつづいてくれるこを願うのみです。(でも今晩は雨です)
収穫の間、私は裏方の食事やらおやつ担当なのですが、昨年ドメーヌ・グリヴォやドメーヌ・グージュでの収穫体験から思ったことや、うちの収穫隊からのご意見ご感想から思いついたことを、特に畑や醸造所での仕事に関して私の思いついたこと、気になることをパトリックに考えてもらうつもりで意見として伝えたのですが、人に指示されることが大嫌いなパトリック、少々怒らしてしまったようです(意見しただけで、指示はしていませんが)。
それは、数年前の収穫時の写真を引っ張り出してきて、「このテーブルはこの位置。このテーブルクロスはこれでなきゃダメ。」と、神経をぴりぴりさせている義母に通じるものがあります。
早くこいこい、収穫日。もう、準備万端過ぎるほど準備OKです。



2004年9月24日 日記 Bize 千砂
ドメーヌ・グリヴォが収穫を今朝開始しました。例年は、当然のごとく、うちが先で、数日後にヴォーヌ・ロマネのグリヴォーがスタートするのですが、今年は逆転。こんなの初めてなのでは?
こうなってくると、わたしもちょっとあせってしまいます。天気との兼ね合いもあるし…
ブドウの酸と糖度のバランス関係が、今年はすごくいいようです。
あとはお天気次第。
昨夜の雨は朝にはすっかりあがり、雨露も乾いていました。よし。



2004年9月25日 Simon BIZE収穫初日 管理者
25日土曜日 収穫初日(晴れ時々曇り)

午前中はサビニーブラン、午後はアロースコルトン、サビニープルミエクリュ フルノーを収穫

収穫初日という事で、朝の集合時に「あら、おひさしぶり」以下長くなり、7時15分蔵集合も畑到着は8時前。天気にも恵まれ、皆楽しく収穫をした模様です。私はというと蔵にて午前は白葡萄処理、午後は赤の選果作業。「2004年は選果の年」とスローガンを選果隊の皆に押し付け、一丸となり頑張ってます。



2004年9月27日 日記 Bize 千砂
収穫3日目の今日は、午前中フルノー、午後マルコネを切り終えました。順調に進んでいます。
奇跡が起こったとしか思えない今年のブドウ。非常にいい状態で、果汁の糖度と酸の数値が素晴らしく、またバランスがいい。果汁の比重は平均で1080から1085に達し、つまり糖度は12度から13度と、十分甘い。15日の日記にも書きましたが、あれから約2週の間に補糖の必要のない数値にまで成熟しました。
そして、ここ近年にないほどの素晴らしい酸の質なのだそうです。9月に入ってからの昼と夜の温度差が大きく、酸にメリハリができたのですね。それから、冷夏であったおかげで、ブドウの木の根が地中のカリウムを吸い上げることなく、酸の低下を引き起こすことがなかったのでしょう。(2003年はその逆でした。カリウムがどうして酸の低下を促すのか、そこまで私は理解してません。化学が得意な方、原子記号でも使って説明してください)
それから、昨年の反動か、生産量の多いこと。1999年並みかそれ以上かもしれません。
もちろん、腐敗果もあります。8月の雹の被害を受けて、傷ついたブドウもあります。でも選果を厳しく行えば大丈夫。今年の選果スタッフは、収穫隊募集で来てくれた二人を含めて、日本人で固めています。フランス人だと口ばかり動いて、肝心の手が動かないのです。とても辛い仕事を本当によくしてくれます。感謝。
というわけで、とても信じられない、好ましい雰囲気の中で収穫が進んでいます。
9月の晴天がもたらしてくれた今年の実り、大切にしなきゃ。
今後1週間、雨なしという予報。天気のことを気にせず、ブドウの成熟状態に合わせた収穫が出来ます。
パトリックをはじめ、50人の収穫隊みんなが笑顔であることが、何よりも嬉しいです。



2004年10月9日 日記 Bize 千砂
6日水曜日の午前10時に収穫終了。
先月25日にスタートして以来、昨日まで晴天続きだったのに、6日は朝から雲行きが怪しく、サンドイッチ休憩の9時ごろから雨が降り始めました。それからだんだんとまとまった雨となってきたのですが、もう、関係ない、ブドウ収穫終了です。
天気の気のゆるみと同様、私も脱力し、今朝は頭痛がひどく、起き上がるのが億劫でした。収穫がスムーズに進行するように影で収穫隊やパトリックを支えるのが私の仕事。自分でも感心するほどよく動きました。でもそれは、毎年収穫のために集まってくれる気の置けるいいスタッフがいてくれたおかげです。本当にありがとう。
醸造所では、静かに作業が進んでいます。赤の漬け込み作業も1週間たち、ただいま発酵真っ最中。白は小樽での発酵となります。
一部では2004年は酸の質が1996年に似ているといわれています。今後の成長が楽しみです。




※お読みいただき誠に有難うございました。ビーズ千砂さんにも感謝!
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